「親鸞会」の卒業と「念仏の信心」のススメ

親鸞会からの卒業と、いろいろな入射角で浄土真宗の領解を取り上げるブログです

⑤「親鸞聖人像」ついて

 「親鸞聖人像」ということについて述べてみたいとおもいます。

 「これが浄土真宗の教えである」と語られるとき、親鸞聖人のお言葉があげられて説明がなされ、その中で自分の領解を申し上げる、というのが浄土真宗のご法話というものの大体の構成ではないかと思います。
 
 親鸞聖人のお言葉をあげるのは話者がともに聞かせていただく姿勢を示すことでもありましょうが、話者にはそれぞれの「親鸞聖人像」というものがあるのではないかと思います。
 聞く側も、その話者を通じてそれぞれの「親鸞聖人像」を思い浮かべることでしょう。

 古い説教本や親鸞論などを読んでいると中には唐突に親鸞聖人のお言葉を示して「親鸞聖人がこうおっしゃっている」と自己主張し勝ち誇ったように終了する論法に出会います。

 そこでは親鸞聖人のお言葉を共に聞かせていただくに留まらず、自分の「親鸞聖人像」に願望を投影し、その虎の威を借りて何かを実現しようとする場合があるのだとおもいます。
 
 親鸞聖人は膨大な書物を残されています。
 また、仏教は②「因果論」(縁起論)で述べたように多くの派に分かれ様々な経典として編纂されてきたものです。
 一部分だけを取り出したら、矛盾していたり大変危険な思想になるような部分がたくさんあります。
 
 親鸞聖人のお言葉をあげているからといって、正しい「親鸞聖人像」を語り尽くせるというはずもありません。
 よく注意しなければならないように思います。
 
 「勝他」のための争論からは、時には宗教者の醜悪な業というものを見せつけられます。
 
 自分自身を振り返ってみると都合のよい「親鸞聖人像」に自己を投影し、破邪顕正という名の「勝他」こそ親鸞聖人の意思にかなっている正義だ、などと強く思い込んでいた時期がありました。

 それは歪曲した「親鸞聖人像」を利用しながら、自分の主張と願望を実現しようとする行動に繋がってゆきました。
 そして「勝他」の妄想の中で自己実現をはかろうとしていたのではないかと思います。
 
 親鸞聖人は、ご自身についてあまり書き残されていませんので、本当の「親鸞聖人像」はよくわからないことが多いそうです。

 親鸞会で思い浮かべるイメージは、アニメ映画の親鸞聖人だとおもいます。
 以下のような親鸞会親鸞聖人の描き方は史学的に根拠が薄く、何らかの意図をもって描かれていると思われます。

・僧侶が結婚したという理由で「破壊坊主」「気ちがい坊主」「色坊主」と罵られた
・「一向専念無量寿仏」を叫んで他の仏や神を排斥し八方総攻撃にわれた
・三大諍論で法然上人のお弟子たちを破邪顕正して師匠の前で恥をかかされたと恨まれた
・「選択本願念仏集」の書写を許され兄弟子たちにネタまれた
・(後鳥羽上皇だけでなく)天皇を含む権力者たちを憎んだ
・風雪に耐えてしのんで孤独な関東布教に赴いた
  
 親鸞聖人は本当にこのような孤独で破壊的、攻撃的かつアナーキーな方だったのでしょうか。
 偏った「親鸞聖人像」は、孤独で攻撃的かつ自分たちの教団だけが絶対的に正しい、などという誤った風土を醸成し、正当化してしまうと考えます。
 
 親鸞聖人はこのような方ではなかったであろうということは、真宗史では概ね常識となっています。

 一体どのように、このような「親鸞聖人像」が作り出されたのか、という点については慎重に検証する必要があるのではないかと考えています。
 
 先日、ある真宗系の仏教学者の方が「誰か親鸞会論やらないのかな、誰かやるべきだと思う」と言われていました。
 真宗学会などでは親鸞会は「宿善論」や「派外からの異説」論文で異安心と断定されあたかも真宗界には存在しないものとなっているようです。

 今後、その実像、時代背景、教義体系などが検証されることは、これからの浄土真宗を考察するために少なくない意義があると考えます。

 また、近年研究がすすんでいる戦時教学に関わった宗教者だけでなく、近代の作家、学者、哲学者などにも自己の願望を投影た「親鸞聖人像」を創造してきた事例が実に多く存在しています。

 今後も留まることなく洪水のように新たな「親鸞聖人像」というものが生み出されていくことでしょう。

 それでは、本当の「親鸞聖人像」にどのようにすれば出遇うことができのでしょうか。
 
 その答えは、いろいろな方から聞法し、真宗史を正しく学び、親鸞聖人のご旧跡などを足で回り、如来の慈光を仰ぎ、お念仏を申しつつ、自分自身で見つけ出すしかないのではないかと思います。
 
 誰かのつくった「像」の親鸞聖人ではなく、私のためにいまここに浄土から還帰される親鸞聖人にお遇いするのが浄土真宗のみ教えである、という私の領解を書いてひとまず今回の投稿を終了させていだきます。